一般皮膚疾患
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- 角化症
- 乾皮症
- ウイルス性イボ
ウイルス性イボ 〜尋常性疣贅編
疫学
俗に言う「ウイルス性イボ」とは、尋常性疣贅のほか、伝染性軟属腫(水イボ)や尖圭コンジローマ、ミルメシア、扁平疣贅、ウイルス性足底表皮嚢腫、疣贅状表皮発育異常症など含めた個疹の総称になります。
本邦では皮膚科を受診する4.5%がウイルス性イボを主訴で受診し、そのうち6〜10歳が23%、11〜17歳が17%を占め、小児に好発します 1)。ウイルス性イボの中で最も頻度の高い尋常性疣贅は、ヒト→ヒト感染し、プールやジム、温泉などの公共施設で感染するケースが多いです。
原因
2本鎖DNAウイルスであるヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス:HPV)による感染症で、皮膚・粘膜の(重層)扁平上皮細胞との親和性が高く、微小な傷から侵入して基底細胞に感染し、細胞内で潜伏持続感染と複製増殖を繰り返します。
220種類以上存在する遺伝子型は、臓器や部位による親和性が異なるため、婦人科・耳鼻科・泌尿器科領域の「粘膜型」と皮膚科領域の「皮膚型」に大別されます。粘膜型HPVは発癌に関与する遺伝子型が多く、高リスクと低リスクに分けられ、子宮頚癌の原因ウイルスであるHPV16・18は粘膜型高リスクに、尖圭コンジローマの原因ウイルスであるHPV6・11は粘膜型低リスクに分類されます 2)。
症状
尋常性疣贅は3~10mm程度の角化した結節病変が手足など皮膚の厚い部位に好発しますが、顔・鼻・肘・膝・爪の下、外陰部などに単発で出現し、徐々に多発・癒合してサイズが増大していきます。臨床的に尋常性疣贅は、典型例と指・糸状疣贅,足底疣贅,モザイク疣 贅,爪囲疣贅,爪甲下疣贅,ドーナツ疣贅(リング疣贅)などの非典型例に分類され、いずれもHPV2a・27・57 が関与します。特殊型としてミルメシア(HPV1a)、扁平疣贅(HPV3・10・28・29)、ウイルス性足底表皮嚢腫(HPV27・57・60)、疣贅状表皮発育異常症(HPV5・8・12・14・15・17・20・47)、尖圭コンジローマ(HPV6・11)などがあります 3)。
診断
通常、病変の性状や大きさ、部位、分布などから総合的に病型診断することが可能ですが、病初期では区別がつかない症例を時々経験します。ダーモスコピーという接写カメラの検査で角化病変内に点状出血点(dotted vessels)、黒色小点、赤色小点を認めたら、尋常性疣贅の可能性が高くなります。皮膚生検で病理組織学的検査を行い、PCR法などの遺伝子検査でHPVの型同定をすることも可能ですが、通常の実臨床では行いません。
治療
日本皮膚科学会の尋常性疣贅治療ガイドラインに記載されている治療法をまとめました 3)。
(エビデンスレベル:推奨度A: 行うよう強く勧める、B: 行うよう勧める、C1: 考慮しても良いが根拠はない、C2: 根拠がないので勧めない、D: 行わないよう勧める)
- ① ★液体窒素冷凍凝固術(A):当院で取り扱いあり。
マイナス196℃の液体窒素を綿棒ないしスプレーで「イボ」に当てて凍結させる治療法です。有効率手指69% 4)、足底20%と報告されています5)。当院では1〜3週間に1回通院して、角化が強い場合は削ってから冷凍凝固術を施行します。 - ② ★サリチル酸外用(A):角層剥離と免疫賦活(有効率19〜49%):当院で取り扱いあり。
(サリチル酸ワセリン、スピール膏、サリチル酸コロジオン) - ③ ★ヨクイニン内服(B):当院で取り扱いあり。
- ④ ★接触免疫療法(SADBE)(B):当院で取り扱いあり。
- ⑤ ★活性型ビタミンD外用(C1):当院で取り扱いあり。
- ⑥ ★フェノール外用(C1):腐蝕作用:当院で取り扱いあり。
- ⑦ ★ポドフィリン外用(C2):当院で取り扱いあり。
- ⑧ シメチジン内服(C1):当院で取り扱いなし。
- ⑨ イミキモド外用(C1):当院で取り扱いなし。
- ⑩ レチノイド外用(C1)、レチノイド内服(C1):当院で取り扱いなし。
- ⑪ モノ/トリクロロ酢酸外用(C1):強酸による腐蝕作用:当院で取り扱いなし。
- ⑫ グルタールアルデヒド外用(C1~C2):腐蝕作用:当院で取り扱いなし。
- ⑬ CO2レーザー(B)、Nd:YAGレーザー(B)、PDLレーザー(B)、Er:YAGレーザー(C2)、光線力学的療法(C1)、電気凝固術(B):当院で取り扱いなし。
- ⑭ 外科的切除(C1)、いぼ削ぎ法(C1)、超音波メス(C1):当院で取り扱いなし。
- ⑮ ブレオマイシン局注(C1)、5―FU外用(C1):当院で取り扱いなし。
- ⑯ インターフェロン局注療法(C2):当院で取り扱いなし
- 1)Furue M, et al, J Dermatol, 2011; 38: 310-320.
- 2)zur Hausen H, J Natl Cancer Inst, 2000; 92: 690-698.
- 3)渡辺大輔ほか.日皮会誌, 129(6),2019; 1265-1292.
- 4)Sterling JC, et al, Br J Dermatol, 2014; 171: 696-712.
- 5)江川清文. 皮膚科の臨床,2003; 45: 1467-1473.
炎症性皮膚疾患
- アトピー性皮膚炎
- かぶれ
- 湿疹
- 乾癬
アトピー性皮膚炎
慢性的に増悪・軽快を繰り返す、痒い湿疹を主病変とする皮膚疾患で、アトピー素因(体質)とバリア機能の脆弱 性が背景にあります。結果的に、睡眠や勉強、仕事など日常生活に影響し、QOLの低下を招きます。
- 悪化因子:
- 職場及び日常生活環境での抗原や刺激物への曝露、生活習慣と温度や湿度などの環境因子、皮膚の生理機能の変 調、温熱、発汗、ウール繊維、精神的ストレス、食物、飲酒、感冒など。
- 治療の目標:
-
- 1.症状はないかあっても軽く, 日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない
- 2.軽い症状は続くが、急激に悪化することは希で、悪化しても持続しない。
日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎ガイドライン2021
以下の説明は、上記ガイドラインより引用しております。
アトピー性皮膚炎の臨床像
- 乳幼児・小児期:
- 症状が顔や頭にでやすく、痒みの強い湿疹を生じ、丘疹、紅斑、ジクジクした滲出液がしみ出たりします。
- 思春期:
- 乾燥が広範囲にわたり、湿疹は癒合・拡大し、皮膚は厚くなり、色素沈着を伴い苔癬化と呼ばれる状態になります。
- 成人期:
- 苔癬化は顕著になり、目を擦ることによりアトピー性白内障が誘発されます。赤く隆起した痒疹を生じると、局所的な痒みはさらに増します。
アトピー性皮膚炎の疫学
- 一般的にアトピー性皮膚炎は、年齢とともに軽快傾向を示しますが、本邦では3歳で13.2%、20歳代で10.2%の罹患率で、小児では男女差はなく、成人ではやや女性に多い(図3)。
- アトピー性皮膚炎の重症度(図4)
- 中等症以上の割合
-
- 1歳6ヶ月児:16%
- 3歳児:15%
- 小学1年生:24%
- 小学6年生:28%
- 大学生:27%
- 重症以上の割合
-
- 小学1年生:1.7%
- 小学6年生:2.2%
- 大学生:5.5%
- 4ヶ月から3歳までの罹患率(図5)
- 生後4ヶ月の16.2%が罹患し、そのうち70%が1歳6ヶ月で寛解。
- 3歳までの累積発症率は30%。
- 成人:20歳代ピークで、40歳代までに2/3は改善。
アトピー性皮膚炎(AD)の病態
①生理学機能異常:
- バリア機能の低下(水分保持能の低下、微生物に対する易感染性)*
- 発汗異常
- 皮膚血管反応の異常
*フィラグリンは角層バリア機能形成に重要なタンパク質で、分解され天然保湿因子となり、保水や紫外線吸収、皮膚表面のph(弱酸性)維持による微生物防御等に寄与する。
AD患者の30%にフィラグリンをコードする遺伝子変異が報告されている。
②免疫学的異常
アトピー性皮膚炎患者では、Th2細胞(リンパ球)優位。Th2細胞が産生する炎症性サイトカインIL-4、IL-13、IL-31が、Th2細胞をさらに活性化し、バリア機能低下、表皮角化細胞障害、痒み惹起、抗菌ペプチド産生低下等が引き起こされ、アトピー性皮膚炎の病態を形成します。
③外的要因
搔く行動や発汗、高い室温、空気の乾燥、高い湿度、石鹸・シャ ンプー・化粧品など、カビ、ダニ、ハウスダスト、動物の毛、精 神的ストレス、日光、花粉、食べ物など
アトピー性皮膚炎の治療
- 確実な診断と検査、悪化因子・重症度の評価
- 治療目標を相談
- 薬物療法やスキンケア・アレルゲン・悪化因子対策等
- 軽症例の寛解導入
- ステロイド外用
- タクロリムス外用
- デルゴシチニブ (コレクチム®: JAK阻害薬) 外用
- ジファミラスト (モイゼルト®: PDE4阻害薬) 外用
- 抗ヒスタミン薬内服
- 中等症以上の難治状態の寛解導入
- 紫外線療法
- 心身的アプローチ
内服
- シクロスポリン内服 (T細胞活性抑制)
- デュピルマブ (デュピクセント®:ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体)
- トラロキヌマブ (アドトラーザ®:ヒト抗ヒトIL-13モノクローナル抗体)
- ネモリズマブ (ミチーガ®:ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体)
- レブリキズマブ (イブグリース®:抗ヒトIL-13モノクローナル抗体)
- バニシチニブ (オルミエント®:JAK阻害薬)*
- ウパダシチニブ (リンヴォック®:JAK阻害薬)*
- アブロシチニブ (サイバインコ®: JAK阻害薬)*
*B型肝炎と結核のスクリーニングが必要
- 寛解導入軽快後
- 保湿療法の継続
- リアクティブ療法
- プロアクティブ療法
- デュピルマブなど継続
※高額療養費が適応される費用または相当の治療費がかかります。
医療費負担が軽減される制度もございますので、詳しくはご相談下さい。
医療費負担が軽減される制度
様々な医療費の助成制度があります。
患者さまの収入にもよりますが、ある程度の費用負担で治療継続が可能になります。
- ①医療費控除:1年間で支払った医療費の総額により還付金を医療費控除する。
- ②高額療養費制度:1ヶ月間の支払い額が一定額を超えた場合、払い戻される。
- ③付加給付制度(健康保険組合等の独自制度)
ご加入の医療保険によっては、独自に「付加給付」として国が定めるよりも手厚い医療費助成を行っております。自己負担上限額がさらに低く設定されている場合があります。詳しくはご加入の保険者(健康保険組合等)にご確認ください。
健康保険証の法別番号:06,31,32,33,34,72,73,74,75
法別番号が上記番号の場合、付加給付制度が適応される可能性 があります。国民健康保険には付加給付制度がありません。 - ④学生などへの医療費補助制度
大学等の学校では、独自に学生の医療費負担を補助する制度がある場合があります。詳しくは学生課などにご確認ください。 - ⑤ひとり親家庭への医療費補助制度
自治体により、ひとり親家庭(母子家庭・父子家庭)の方に医療費助成を行っている場合があります。助成内容や自治体により異なりますので、詳しくはお住いの自治体にご確認ください。
細菌・真菌・ウイルス性の
皮膚感染症
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皮膚の傷病処置
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