- 2025-12-30
#1 地中海食の勧め
地中海食の定義:イタリアやギリシャ、スペインなど地中海沿岸の伝統的な食習慣で、野菜や果物、豆類、全粒穀物、魚介類などを豊富に摂取し、オリーブオイル主体の油脂を使用して乳製品や鶏肉は適度に、赤身肉や甘いものは控えめにする食事法で、十分な水の摂取と食事と一緒に適度なワインをとり、人と一緒に食事を楽しむ生活習慣をいう。

https://oldwayspt.org/explore-heritage-diets/mediterranean-diet
和食の定義:米、魚、野菜を中心とした伝統的な日本料理でユネスコ無形文化遺産に指定されている。海や山、畑などで獲られる新鮮な旬の食材を活かす:刺身、寿司、天ぷらなど
日本食の定義:和食を含む日本で食べられる全ての料理を指す。海外から伝わって日本風にアレンジされたものも含む。
地中海食の効能機序:慢性炎症に関連する複数の代謝経路を通じて全身性の炎症と酸化ストレスを軽減する。①抗酸化ビタミン(β-カロテン、ビタミンC、ビタミンEなど)、②ポリフェノール、そして③リポタンパク質の酸化を抑制して炎症誘発マーカーを低下させる植物化学物質の含有量が高い(Br J Clin Pharmacol. 2017;83(1):114-128. doi:10.1111/bcp.12986)。オリーブオイルに含まれるオレオカンタールによるシクロオキシゲナーゼ阻害や脂肪分の多い魚に含まれるオメガ3脂肪酸による炎症誘発性エイコサノイド阻害などが挙げらる(Nutrients. 2025;17(9):1603. doi:10.3390/nu17091603)。地中海食は脂質プロファイルを改善してインスリン感受性を高め、免疫活性化とケラチノサイトの増殖に関与するホルモンおよび成長因子のシグナル伝達を調節する(J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018;73(3):318-326. doi:10.1093/gerona/glx227)。さらに腸内細菌叢の好ましい調節、特に抗炎症作用と免疫調節作用を持つ短鎖脂肪酸産生菌の増加と関連している(Mol Nutr Food Res. 2017;61(12). doi:10.1002/mnfr.201700300)。
摂取頻度:
①月に数回:牛肉、豚肉、スイーツ
②週に数回:鶏卵、卵、チーズ、ヨーグルト
③毎週2回以上:魚、シーフード
④毎日の食事:野菜、果物、全粒粉、オリーブ油、豆、ナッツ類、マメ科植物・種子、ハーブ、スパイス
⑤毎日飲む:水
⑥適度に飲む:ワイン
NEJM報告:0~9点の地中海スケールが高いほど心血管疾患や癌による死亡リスクが減少する。
① 1日に2~3杯以上の野菜を摂取する。
② 1日に2~3個以上の果物およびナッツを摂取する。
③ 週に2回以上豆類を積極的に食べる。
④ 週に2回以上、魚およびシーフードを摂取する。
⑤ 1日に3~4杯以上の全粒穀物を食べる。
⑥ 油脂摂取は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸を中心とし、特にオリーブオイルを主な脂肪源とする(1日に25~40g)。
⑦ 週に1回以下に肉類の摂取量を抑える。
⑧ 乳製品は適度に摂取し(1日に1~2杯程度)、主にチーズやヨーグルトを中心とする。
⑨ アルコールは適量で、特に食事と共にワインを摂取する(男性は1日に2杯以下、女性は1杯以下)。

非地中海食群(0~3点、6848人)、中間群(4~5点、9488人)、地中海食群(6~9点、5707人)。追跡期間中に275人が死亡し、性別や年齢、BMI、身体活動性などで補正すると地中海食スコアが高い人ほど死亡リスクが低かった。地中海食スコアが2ポイント高くなると、死亡リスクは4分の1低くなると推定された。死因別では心筋梗塞など冠動脈疾患による死亡リスクは33%、癌による死亡リスクは24%低くなった。なお個別の食材摂取と死亡リスクとの因果関係はなかった。(N Engl J Med 2003;348:2599-2608 DOI: 10.1056/NEJMoa025039 Vol 348, 26)
JAMA報告:厳密な地中海食摂取の介入群は一般的な低脂肪食事指導群と比較してPASIスコア(重症度スコア)の平均の差は-3.4(95%CI: -4.8〜-2.0, P<0.01)で、PASI75改善率(重症度が75%改善した割合)47.4%、さらにHbA1cの有意な減少を認めた(-4,1mmol/mol, 95%CI -6.9~-1.3, P=0.01)。

まとめ:地中海食はワインを除けば昔の和食に近い食習慣ですね。日本でも江戸時代までは狩猟で得た獣肉は大丈夫でしたが、家畜を殺した獣肉は禁忌で、獣肉が魚肉を上回ったのも第二次世界大戦後の高度成長期からと言われています。
地中海食は古くから欧米で健康への有用性、疾病予防の観点から多くの論文発表がなされています。皮膚疾患の7割が炎症性疾患が占めると言われ、炎症性皮膚疾患の代表である乾癬の治療は生物製剤など日進月歩で進んでいます。乾癬患者は健常者と比較して肥満症、脂質異常症、耐糖尿異常、高血圧症、非アルコール性脂肪性肝疾患、心血管イベント(MACE)、死亡率が高くなることが知られ、生物製剤の介入により心血管系イベントや死亡率の有意な低下が報告されています(Clin Rheumatol Rel Res, 35: 58-63, 2023)。
今後の疾病予防の観点から乾癬患者に限らず院長も含め皆さん共に健康的な生活を心掛けたいですね。
